光然(こうねん)の高野山修行日記・一 中半

三月二十一日(土曜)入寮日
九時:山内での保証寺になって頂いている龍泉院を出発。朝食もたっぷり頂は気合を入れて専修学院へ。前日に運び込んでいた荷物を同居人と相談しながら整理。(寮舎の生活は二人一組が基本、六畳一間での共同生活となる)

一通り片付いた所で隣室の人と昼食へ。高野山のメジャーなお食事処「南海食堂」にて、きつねうどんを注文。

十三時:作務衣に着替え入寮式。総員六十七名、一名は中国からの留学生のため、ビザがまだ下りず欠席。院内の説明。これ以降、自由な外出は無し。衣帯は作務衣か僧衣に限られる。

十四時半:白袈裟着用の説明。

十七時:夕勤行-ごんぎょう-は般若心経一巻。今思えば声も出ていなかっただろうし、全員の声がばらばらだったように思う。

十七時四十分:夕勤行後すぐに袈裟を外し夕食(ここでは非時食-ひじき-と言う)。
一言も口を利く事が許されない食堂-じきどう-。全員が揃うまで背筋を伸ばし、しっかりと合掌をして待機。

メニューは白米に沢庵、山菜入りキツネうどん。夕勤行時に寮監の先生方が用意して下さっていたので、天かすが汁を吸い尽くして見た目には汁気が感じられない。

昼食と麺が被ってしまった事に若干後悔。静寂を求められる場に麺類が上がっている事に明確な意図を感じ、警戒心を高めつつ箸をつける。

「うるさい!」

突如響き渡る寮監の怒声。

うどんを勢いよく啜り込んだ者がいたらしい。つまりは此処がどいう場なのかを、身をもって知らしめるためのうどんなのだ。

その後は再度の怒声も無く黙々と食事は終わり、入浴や室内の片づけ。

八時四十五分:院内生活における諸規則等の説明。

十時十五分:消灯。