光然の高野山修行日記 ・七 前半

今月はこの高野山修行日記で何度か話題にあげながらも、詳しいお話はしていなかった「食事略作法(じきじりゃくささほう)」とその風景についてお話をいたします。
まず本来、僧侶の生活は食事も修行の一環として、一日二食となっているそうです。それでは若者の集団の体を維持できない、現代の生活環境に合わない等諸々の事情で毎日三食の食事を頂けるようになっていました。

そのような次第で朝食と昼食は、本来の修行の枠組みに入る「食事(じきじ)」と呼ばれ、袈裟を着用の上で今回お話しする「食事略作法」が用いられていました。

夕食は、本来僧は夕食を摂らないという慣習を踏まえ「非食事(ひじき)」と呼ばれていました。食事ではなく、身体を健康に保つための「薬食(やくじき)」とされます。この際は修行外の行為として袈裟を着用せず、「食事略作法」も用いられません。しかしここも修行の一環。以前お話したように、皆が自分の座坪(ざっぱ)に入るまで背をしっかり伸ばし、合掌で待機する事や、音を立てる事を戒められている事は変わりありません。

話がそれましたが、「食事略作法」がどのように進行するかに戻りましょう。

全員が揃い、食堂の入り口が閉まったタイミングを見て、上座に寮監先生と並び座る日直が、槌砧(ついちん)(木槌と六角形の台座のセット)を打ち鳴らします。

最初の一打で合掌の姿勢のまま頭を下げ、次の一打で頭を上げます。

また一打をし、日直が皆が平等の食事ができる事、清浄なる食事となる事等を高らかに唱えあげます。

「三鉢羅佉多(さんぱらぎゃた)」

続いて寮監先生も食堂に響き渡る音量で唱えます。

「平等行食(びょうどうぎょうじき)」

光然の高野山修行日記 ・七 中半に続く

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