俳諧の世界では彼岸といえば春彼岸のこと、誤解ないようにいえ
ば秋の彼岸は「秋彼岸」といった方が適切です。彼岸は彼(か)の岸、
我々が生きているのは此岸(しがん)という次第。
「彼の岸」とは私たちの目標であり、此の岸は現在の自分の立って
いる場所と言い換えることもできます。
間に横たわる川、あるいは大海かもしれませんが、水の上を渡る
船に相当するのがみ仏さまの教えという訳です。
構造改革という船もありますが、これが優れた船か泥舟か分かり
ません。行く先も彼岸では無くて出発桟橋だったりすることも考え
られるので皆さんが不安に思われるのです。
(鈴之僧正さまのお話を要約 田川純照 筆記)
十善戒は彼岸に渡る安全な船
乗船料は自分自身を見つめること
誠実で勤勉で素直で持久力があれば、他人にとって利益をもたら
す人間として存在できます。他人にとっていかに都合の良い人がい
つの世でも必要とされるか話すまでもありません。
秀吉が百姓から太閤になるまでの出世物語は現代でも通用するこ
とですが、引用することは最近では難しいです。
人間は等しく平等なんて酷(ひど)い嘘です。赤子と大人と人間
としての尊厳は平等ですが、赤子に生活力なんて絶対に有り得ませ
ん。何故に子供を大切にするか、じっくりと考えてみたいものです。
受胎の瞬間から子供は相続権など一人の人間として尊重すべきもの
で、中絶は殺生に該当します。
最近は中学生レベルまで性行為年齢が下がっていますので、不邪
淫の項目と合わせて純潔教育をする社会の役割が必要です。
この五年間で観音院で水子さんの精霊の供養をされた方は五十万
人を超えます。メールで依頼されれば供養は無料です。しかし住所
・氏名・生年月日、精霊数は必用です。守秘義務は完全に守られま
すので気になる方は遠慮無くメールをください。
”観音院”info@kannon-in.or.jpまで。
安易に中絶してしまう男性と女性、生命の尊厳を蔑(ないが)ろ
にし、本当は不幸がまっているのです。子供を生む生まないは母親
の判断で自由に決められるなんて「幸不幸」の選択は女性本人次第
という理不尽な意味と異なりません。
最近、先端医療の分野で体外受精した胚(はい)を研究して臓器
のパーツを作ろうという動きがありますが、クローン人間の研究と
同じで、自然の制裁が必ず待ち受けています。これらは殺生です。
しかし条件付ながら、人胚を使う研究が承認されるようです。四苦
八苦を技術革新で乗り切るのは尋常ではありません。必ず後悔する
事態が起きます。
人が人間や社会を誤魔化すことは可能ですが、自然を誤魔化し自
然の制裁は避けることは不可能です。自然は「神」とも「仏」とも
換言しても結構です。
皆さんに一番大切にして頂きたい戒は「不殺生」です。生きてい
るものの生命を絶つことが単純な殺生ですが、生命は時の経過でも
あります。時間を粗末にすること、他人を約束時間を超えて待たせ
ること、無意味な作業をさせること、それらは全て殺生です。
金銭は時間そのものということもできます。金銭を浪費すること、
賭博に費やすこと、投機をすること、借金を約束日に返済せざるこ
と、高利で他人に貸すことなどは罪深いことです。
不景気とデフレは大殺生の結果
利益追求は需要を超えた生産に
売れるものを作る、安くするために大量生産する、人を集めるた
めに賃金を高く設定する、消費が増える、、、日本はこのようにし
て使い捨て国家になり、ゴミ列島になり下がりました。
僅か四十年前は初任給三千円、生活難の時代でした。現在は約百
倍になっていますね。昔は人手も安かった、そのころアメリカ国籍
を持つ年金受給者は五万円くらい、日本で生活されれば優雅な生活
が送れました。
昔も今も日本は「資源」がありません。資源を輸入して、加工賃
を得て、それを輸出して差利益を得る、日本は付加価値立国だった
のです。
先般、中国の桂林に観光で行きましたが、日本の四十年昔と大体
同様な経済事情ですね。ベトナムもタイも、同様です。近代国家の
体裁を整えたのは韓国やマレーシア、シンガポールくらいですね。
それでも日本の生活水準が一番高いように思われます。
お米に高い関税が掛けられていることはよく知られたことですが、
シイタケやネギ、イグサにセーフガードをかけたのはナンセンスな
ことです。
中国は今、日本にとって生産工場なんです。高い関税を掛けると
工場が困ります。ユニクロだって作らせているのは、日本人です。
安いタオルも同じ構造であり同じ仕組みです。
日本の伝統産業、織物とか漆器なども技術ごと中国に移転されて
います。
では日本人の初任給が四十年昔に戻ればやって行けるかといえば、
それは非常に難しいことです。多くの企業や個人は、相当な借金が
あって、モラトリアム(債務の返済を延期するとか棚上げにする)
でもやるか、通貨を巨大に注入して円安インフレ傾向にするか、
取れる手段は限られています。
一ドル千円くらいになると、日本の産業は息を吹き返すと思いま
すが、現実的とは思われません。通貨の下落は影響が多方面にわた
るからです。
ともあれ、幾らものが安くなっても、もう買う物がありません。
どの家も冷暖房完備、箪笥の中も一杯、車もぼつぼつ一家に二台の
時代。テレビも冷蔵庫もパソコンも、必要なものは大体二つぐらい
はあるのです。大浪費をやって、皆さん物持ち。運が悪い人は二十
年とか三十年の返済債務の付いた家に住んで、売っても債務の半分
くらいしか値段が付かない。
会社も同じことです。高性能の加工機械やら職工をかかえる本社
等、高齢化した高給社員が多くて、景気の低迷で仕事がありません。
■観音院は全ての財産が信徒さんの所有と考え、運営は評議員会で、
現金の収支は監事の承認 が必要で、経理は全面公開です。必用
な物も借金やレンタルで調達することをしません。
■観音院は世襲制ではありません。僧侶の内から、衆望のある人が
住職後継者になられます。
僧侶は金銭の授受に関与しません。一切の金銭の授受は信徒さん
の代表専従評議員の担当です。
——————————————————————–
鈴の法話(すずのほうわ)-2- 2001-09-2
映画「千と千尋の神隠し」は推薦です
良くできていて日常生活の反省になります
香川県の豊島(てしま)に産業廃棄物が持ち込まれるようになっ
たのは二十六年前のことでした。六十万トンも累積した廃棄物は島
を汚染し、島民との公害調停の結果、香川県は隣の直島の三菱マテ
リアルの精錬所敷地を借りて高温処理する工場を三百億円も費やし
て運営するそうです。
この工場はリサイクルにも役立ちますので、無駄ということでも
ありませんが、大変なことです。
環境省の発表によれば「ノニルフェノール」という工業用洗剤に
含まれる物質が、日本の河川に通常に含まれる濃度で環境ホルモン
(外因性内分泌撹乱物質)として作用し、実験に使われた魚の精巣
の中に卵ができるそうです。巻貝の多くが雌化していることはよく
知られています。
船舶塗料に含まれている錫が魚介類に取り込まれて、それを食べ
た鳥類に奇形を生じて、現在では錫を含む塗料は製造も使用もされ
ていません。
豊島にも環境汚染が深刻で、アニメ化された「千と千尋の神隠し」
は人間の欲望が肥大するとどのようになるか示唆するものがあり、
怖い映画です。
産業廃棄物の全てが豊島に持ち込まれた訳ではなく、その数十倍
の産廃が日本の何処かに廃棄されたり、こっそりと埋められている
かもしれません。
この近年触法犯罪と、犯罪の多様化や、低年齢化と凶悪化は怖る
べきものであって、その原因は遵法(じゅんぽう)精神と道徳心の
低下にあります。この人たちは、同じく遵法精神と道徳心を失った
大人たちによって教育されたものであり、現在の教育・育児には根
本的に欠陥があります。改善は非常に急がれます。
母乳で育てられる子供が減少しています。空腹になると赤ちゃん
が泣く、そこでおばあさんがミルクを飲ませなさいと勧めます。乳
児は満腹感が上手く機能していませんから少し空腹になると直ぐに
泣いてミルクを求め、それに母親が応じて、やがて母乳が出なくな
る。これはおばあさんの間違いです。ミルクの乱用は、お母さんと
乳児の体調を狂わせていることに留意しましょう。
今年は大変な猛暑でしたが、これも地球温暖化のせいでしょうか、
多くの人の間で話題になりました。その上に降水量が少なく取水制
限も各地で起きそうな成り行きでした。私自身、日々に二百リット
ルを超えると思われる水道水を使用していますので節水に努力した
いと考えています。
観音院では二十四時間連続運転のコンピュータやパソコンが五台
あって、パソコンなどの連続運転は普通のことになりつつあります。
地球は丸くて、どこかでメールを送信して来る人がありますので、
それに対応しています。
日本では未だ電力不足という事態は起きていませんが、このよう
な電化製品等の使い方は、急激に増加する傾向にあり、必ず電力不
足を起こすでしょう。
電力の七十五パーセントは石油燃料を変換したもので、限りある
電気を節約することは大切なことになります。
現在でも不要な照明を消すことなどに注意していますが、境内を
二十四時間開放していますと、万一にも夜間に参詣される方が躓か
れたりされると気の毒ですから、境内の照明は落とせないと考えて
います。本尊さまの照明も二十四時間点灯しています。
仮に全部の電気器具を点けると、電気代は月額七十万円にもなり
ます。必用最小限に節約すると、約半額になりますが、参詣された
皆さまに夏は涼しく、冬は暖かくすることは、大切な供養になり、
はき違えてはなりません。
年末年始と節分、夏超し七夕祭りの「福引」は射幸心を煽らぬよ
う実用品や「ご喜捨頂いた物品」を出します。二十数年昔は、一本
百円で福引を催していたのですが、富くじの販売に当たるのではな
いかと無料にしました。
高額な大型テレビやパソコンなどの賞品も昨年から廃止しました。
それでもお子様向けの福入り大菓子袋は、今後も継続いたします。
お寺に参詣して何か供物を分かちもらえることは、とても嬉しいこ
とであり、今後も両方とも継続したいと願っています。
希望される人に「守護印」を彫って無料で差し上げていますが、
現在は三ケ月待ちになっています。これは、印影はパソコン画面で
編集し、機械で彫刻するのですが、それでも大変な数になります。
私と皆さまとの大切な接点ですから今後も彫り続けます。
相手の立場で相談に乗ること
お寺だけでなく皆さんも大切に
皆さんとの接点といえば、悩み事や困り事相談があります。直接
にお会いした人も万を超える経験を頂きました。そしてお役に立て
た場合もお役に立てなかった場合もあります。
皆さんも是非とも夫や妻子の相談に良く乗ること、友人や同僚、
親族の良き相談相手になって上げてください。
相談に乗れなかったことは、お金の工面です。融通にしろ、期限
付きにしろ、利息の有無に関わらず直接に貸し付けることはしては
なりません。万一お貸しする時には差し上げることを明言した上に
してください。保証人になる力がある人も一人もありません。死ぬ
ような思いをすることになります。
死にたいという相談に乗れる人はありません。ときに死ぬと一方
的に決め付けて本当に死なれるメールを受け取ることがありますが、
受信した時には死なれた後ですから、無力さを嫌というほど思い知
らされます。
■初めて冷房機を置いたのは台所でした。次は冷暖房機を本堂です。
やがて観音院全体が冷暖房完備になりました。冷暖房は広く普及
し電気の需要は大変な伸びで心配なことです。
■相談に乗って上げることは、大変に親切なことで、世間のお役に
立てます。相談相手から感謝されると幸せです。間違った助言を
した時は凄まじい自己嫌悪に陥ることもあります。
——————————————————————–
鈴の法話(すずのほうわ)-3- 2001-09-3
相談に乗るには誠実さと勤勉さが必用
自分から出しゃ張るのではなくて自然体で
信徒さんのなかには労働組合の執行委員長が沢山おられますが、
総じて言えることは勤勉で、会社の方からいえば役職に就けたいよ
うな人望のある人です。
経営者の必要とする人が経営者の反対に立つ訳ですから不思議で
すね。
組合の運営も実は高度な経営と同じなのです。組合運営も会社経
営も極似する性質があるのです。
世の中は、人と人とのつながりの上に存在しています。どのよう
な立場の人でも一人では存在していません。他人に利益をもたらす
人が世の中から求められます。他人に対して善意を持つことが衆望
を担う、衆望を頂く条件です。
人を大切にする、人を生かす、思いやりをもつ、他人のことも我
がことのように心配してあげる。相手の立場で考えることなどは、
不殺生、殺生をしないことになります。
薄情な とか、無情な人、殺生な人、酷い人、約束を守らぬ人、
信用できない人、嘘つき、礼儀知らず、協調できない、殺生をする
人は、さまざまな表現がありますが、簡単に言ってしまえば他人に
嫌われないように生きることが大切になります。
他人の相談に乗る上での注意
何時までも仲良しが続くこと
彼岸はなかなか到達出来ないとしても、折角、春秋と到達目標を
もって生きましょう と仏教徒は一年に二回、彼岸の中日(この日
は昼と夜の時間が同じです、その上に、太陽が真東から昇り真西に
沈む)に彼岸法要を営みます。
その際に二つ「実践目標」を立ててください。一つは、良く勉強
すること、経済や簿記とか、日経パソコンとか、メディカルとか、
日経ビジネス等とか、新聞は丁寧に読んでください。
二つ目は良く考えること、情報収集とか分析とか、工夫、独創的
な知恵などが大切です。沢山の創造的な世間に役立つ知恵を身につ
けてください。
次に重要なのは、その知恵で世渡りできるか否か確かめて、世間
の信頼を受けてください。
他人が欲しがるのは自分のもっていない知恵・知識、技術、権力
などいろいろあります。
知識の中には、資格が必要なものもあります。医師類似行為とか、
貸し金業違反とか、権力と変に結びつくと贈収賄になりますから
「悪知恵」は決して働かせてはなりません。
相談に絶対に乗ってはならないことは金銭の貸付です。約束通り
返済されない時は人間不信になりますし、どうしても必要なお金を
用立てていたら回収のために、債鬼という鬼にならなければなりま
せん。観音院の僧侶は金銭の相談に乗ることを厳禁されています。
死ぬ、死にたいという相談には、死ぬな、そのために如何にする
かしかありません。でも経験論で言えば、死ぬ人は死にます。僧侶
も皆さんも、死ぬという相談に乗ってはいけません。
死ぬと言って死んだ人はいない と俗に言われていますが、その
ように言うと本当に死ぬ人もあります。
生きたい、どのように生きるべきか、という相談なら乗ってもよ
いでしょう。
相談に乗った場合には「守秘義務」が伴います。観音院では職員
に業務上知り得たことを漏らさぬよう厳重に教育がしてあります。
守秘義務については相談される方にも責任があって、守秘義務を
持たない立場の人に相談されるときには、余程口の堅い人を選んで
相談しましょう。
僧侶はもちろん、医師、弁護士などは、裁判所から証言を求めら
れても拒否することが認められています。普通の立場の人が後日、
証言しなくてはならないような内容の相談に乗ることは無理かもし
れません。
観音院では例え想像ができても病名を告知しないこと、触法裁判
の判決を予測しないこと、会社や個人が経済的に破綻していること
を推察しても破産とか民事再生法の適用は助言しません。
それらは医師や弁護士さんの仕事でその範囲を絶対に侵しません。
次に相談に乗れないことは「淋しい」という相談です。「孤独」
は本人の言動や過去の生活に原因があり、淋しいという相談に乗る
のは倫理違反になることが多いからです。
相談の基本は倫理道徳です。観音院の僧侶は「十善戒」に基づい
て相談に乗ることが定められています。み仏さまにご加護を祈るこ
とも重要なことです。
安易に相談に乗ると「デシャバリ」とか「糞バエ」とか、運が悪
いと「事件屋」なんて汚名が付くこともありますので気をつけてく
ださい。
人は成功すれば、嫌でも、人が向こうから寄って来るものです。
名前が呼ばれる、用事を頼まれる、会議などに「お呼び」がかかる
ようになります。
実力以上に評価されていないか、常に自己点検をしていないと、
我が身を過つことがあります。私は観音院に住まわせてもらってい
る僧侶という立場が唯一大切なもので、他の如何なる役職も絶対に
引き受けません。
皆さんが仕事に専念されることが望ましいように、私は皆さんの
話を聞いて、み仏さまに加護を祈り、一切の欲望を捨てていて、何
事にも執着せず、このままいることが望ましいのです。
不殺生、殺生をしないこと、それだけに止まらず、全てのものを
生かす、大切にする、十分に持てる機能を発揮させること。
不殺生は一つの戒で全ての戒を含むくらい大きな戒です。お彼岸
には、「不殺生」を生涯の目的として選んで頂きますようにお祈り
します。
■誤魔化したり、油を売ったり、嘘を吐いたり、約束が守れないと
堕落します。良い人でも倫理違反の行為をすることがあります。
正当化する方向で将来を考えて欲しいものです。
■お彼岸には是非とも、この世で生きているうちに達成する目標を
立ててください。十善戒をひとつ目標にしてくだされば、わずか
五年でこの世は貴方にとって菩薩の道場になります。