般若心経を護持する意味<後編>

【院家さん】 それは、私が経典の山の中に埋まって七年間、読み書き瞑想した中身を教えるのだから寅さんは仏縁の余程篤い人だろう。私の弟子になるには般若心経一日千巻読踊して百日間を経た者なら少しは分かるたろう。百回読んで意味が通じるような事は無いよ。十万回お唱えしたら般若心経の境地が少しは分かってくる。

【寅さん】 去年の秋の彼岸に法主さんが般若心経蝋燭に火を灯して、消えるまで礼拝されて、あれは三千巻ぐらいになるんだよな。若いうちならなんとか出来るかも分からないが、一日千巻はおろか三千巻もあげようとされたのだから引っくり返っても不思議は無い。

具合が悪くなられて養生するのに原因となった般若心をまた使って元気になられるのは法主さんらしいね。

【院家さん】 全部ひっくるめて言えば「いたわり、慈しみ、思いやり、相手の立場で考える」と「世の為人の為」だよ。
色、受、想、行、識のご蘊は皆空だと考えて一切の苦厄を度そうとすると色は空に異ならず、空は色に異ならずと混乱してくるよ。

どうすれば世間の皆さんが幸せになれるか、平和に過ごせるか。つまりは「世の為人の為に尽くしたい」と生きる事に尽きるのだがな。

【寅さん】 観音院のお弟子さんになりたい人は般若心経一日千巻百日間唱え続けるのは自分のためにすると思ったら絶対に続かない。修行者を見ていると楽したい、美味しいものが喰いたい、何か欲しいなんて我欲は綺麗に無くなっておられるのが良く分かる。観音院き教えを易しく説かれるので一見修行は楽なように見えるけど、修行の最初に般若心経十万巻お唱えするのは弟子の人柄を見るのに良いと思うね。

【院家さん】 寅さんは般若心経十万巻読踊して何が得られたか。

【寅さん】 空即是色 色即是空が少し理解出来たかと思った。あんなに何も考えず、無心に般若心経が唱えられたのは嬉しかったですよ。

【院家さん】 人が悟りを開きたいと思って努力していると、努力を止めようとする魔の働きを受ける、様々な煩悩が湧き上がって来て止まる所は楽に転げる。 それが心経読踊の最初の三万巻、世の為人の為にと思うのが次いでの三万巻、残りの四万巻は無欲無我の境地になって終わるな。この経験が私の弟子の資格だと言っても良いだろう。

【寅さん】 観音院が年中無休で朝十時、正午十二時、午後二時の三座を継続されている意味が少し分かって来た。

多くの人が観音院に参詣されて祈願をされたり、供養をお願いされるのは、その祈願や供養に誠心誠意が有って私心が無いからだな。経理を公開され、運営を信徒さんに相談されてなされるのも本当に良い事ですね。

長い間出入りさせてもらって、つくづく思う事だけど観音院の法主さんも住職さんも「お金の事」を話しておられるのを一度も聞いたことが有りません。世の為人の為ですね。

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