給仕の仕方

観音院の護摩壇(ごまだん)の工夫

■観音院の護摩壇は、様式は千年くらい昔のものと見掛けは同じで
すが、実は大変に工夫が凝縮されているのです。
 従来の護摩壇の壇面は、板をたるきで支え、表面には漆で仕上げ
てあります。中央には護摩の炉に相当する釜が設置してあります。
周囲は五色の壇線で囲んであります。
▼観音院では一日三回、護摩を焚(た)きます。普通の護摩壇では
表面は焦げて、炉の下には水の入れ物を置いて熱を防いでいたので
すが、この程度では到底余熱を防ぐことは不可能でした。

▼そこで厚さ1センチのステンレスに変更しました。すると護摩の
修法の途中でステンレスが膨張して、中央部が3センチくらい盛り
上がります。
今度は鋳物で厚さ五センチくらいのものに変更してみました。とこ
ろが重さが三百キロぐらいあって重すぎて困ります。
▼そこで壇面を「九つの銅板」に分けて、支えを垂木から鉄に変更
し、間にガラス繊維を置きました。周囲に二メートルくらいの空気
のカーテンを吹き上げ、天蓋(てんがい)で吸い取るように設計し、
本堂の地下室に空気取り入れダクトと五馬力のモーターをつけまし
た。さらに、高さ十メートルの煙突をつけ、集塵装置と空気吸い上
げの五馬力のモーターを設置して、問題は一切解決しました。

湯のみ茶碗と皿

■仏具に使用されている材料は大部分が真鍮製で金メッキしたもの
ですが。お仏飯(ぶっぱん)は本漆(うるし)朱塗りの器で、大きさ
は簡略な小型ではなく日常使用されるものと全く同じです。
 調理も丁寧に味付けしたもので、大切なお客さまにお出しするよ
うな真心のこもったものです。新鮮の物を朝一番に調理いたします。

■お供えするお茶は、煎茶、玉露など、変わったところではロイヤ
ルコペンハーゲンやマイセンなどの器で紅茶やウーロン茶、ココア
や珈琲をお供えします。
▼難しく考えていません。何処かのお宅へ行かれた際に「メロンを
どうぞ」と丸いまま出されたら、漫画になります。私たちが果物を
お供えする時には直ぐ食べられる状態で、冷やしたものにフォーク
を添えて出します。
 み仏さまは大切なお客さま以上にお仕(つか)えします。

畳敷きから椅子へ

■賛否両論ありますが、畳に正座から椅子式に少しづづ移行中です。
扇風機だけではなく冷暖房機に移行しました。
 ですから寺といえば保守的と思われるかもしれませんがゆっくり
と現代化しています。

▼照明器具も平安・鎌倉時代の様式のものを使っていますが、中は
燈芯に燈油ではなくて、電球から蛍光灯電灯色に移行中です。その
内に光ファイバーなども多用されると考えています。

故人の好物、缶ビールなど

■仏壇やお墓に、生前にお酒が好きだった故人に缶ビールや缶チュ
ーハイ、煙草等を供えてあるのを見掛けますが、珈琲豆をそのまま
珈琲カップに入れてはお客さんには出しませんね。
 墓参のときは、嗜好品は封を開けて、飲める状態で供えて、礼拝
(らいはい)した後はおろしてお持ち帰りください。
▼煙草に火を点けて線香立てで紫煙がたなびいているのも可です。

▼観音院は焼香に伽羅(きゃら)を使用しています。これは純金よ
り高価で入手が難しくなりつつあります。ベトナムへ旅行される方
に依頼して違反にならない程度の量を買ってもらっています。とて
も硬い香木で細かく刻むのが大変な作業になります。

和風法衣(ほうえ)の近代化は無理

■法主さんが金襴の法衣を拒否しておられるのは華美を離れてのこ
とですが、大きな法要法会には金襴もまた有り難いものです。

▼金襴の法衣を着崩れしないように着るのは大変です。一旦着用す
ると小用も慎むべきです。世の中がこれだけ便利になりましたのに
金襴の法衣だけは改良されません。
▼それに金襴緞子自体が伝統工芸品で職人さんも減り、いろいろな
物が安くなる中で値下がりの傾向は見られないようです。

■観音院には十二名分の金襴の法衣が什器(じゅうき)備品として
備えられていますが、手入れが大変です。大切に護持(ごじ)した
いと願います。

■み仏さまにお供え物をするには、私達がふだん大切なお客さまを
 お迎えして接待するような気持ちが大切で、もてなしの心が大切
 です。器(うつわ)は日常生活で大切にしている物が良いですね。

■法主さんはどのような大きな法要で導師を勤められる場合でも、
 空衣(うつお)と袈裟で日常のものを使われています。全部、
 金襴のお坊さんの中でも良く調和して美しく見えるのです。

■お経の多くは伝来した当時の読み方で今日に至っています。漢音
 読み、呉音読みなどですが、多くの皆さまに教えを広めるために
 は、現代語で各国語にするような試みが必要です。

■教えについては、教わったままに無条件に受け入れるよりは、自
 分なりによくよく考えて咀嚼(そしゃく)して、問われても内容を
 良く説明で きるような準備や心得が、僧侶に必要だと考えます。

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