哲学者は科学者?

アリス
なあ、テレス。ソクラテスって有名な哲学者だよね。
テレス
そうじゃ。紀元前5世紀頃のギリシアで活躍した代表的な哲学者なんじゃよ。
アリス
ひょっとしたらソクラテスが最初の哲学者だったの?
テレス
いや、最初の哲学者ではないんじゃ。ソクラテス以前にもギリシアには哲学者がおったんじゃよ。つまり、紀元前6世紀頃には哲学はあったということなんじゃ。
アリス
どんな哲学だったの?
テレス
最初の哲学は自然哲学と呼ばれとるんじゃ。自然哲学者は自然や宇宙を対象として思索(しさく)したんじゃ。
アリス
空を見上げたり、星を眺めながら物思いに耽(ふけ)ることは、もっと昔の人間もしていたと思うんだけど……
テレス
凡人と違って自然哲学者はただ漠然と自然現象を眺めておらんかったんじゃ。表面的に変化する現象のみにとらわれず、変化の根底にある原理や物事の本質を見極めようとしたんじゃよ。
アリス
そんなの哲学とはいえないよ。科学じゃないの?
テレス
そうなんじゃ。自然哲学は科学の始まりともいえるんじゃよ。自然現象を詳細に観察し、それらを分析し、そして現象の背後にある本質を探るために思索をめぐらす。まさに科学的方法論の原型といえるものじゃ。そもそも古代ギリシアでは、哲学とその他の科学は分かれておらんかった。天文学、物理学、生物学は哲学に含まれとったんじゃ。
アリス
なるほど!科学は哲学から派生したものだったのかぁ。ところで自然哲学者はどんなことを思索したの?
テレス
彼らは「万物の根源は何か」ということに強い関心を持っておった。
アリス
「万物の根源」って?
テレス
ありとあらゆるものすべてを造り上げている最も基本的なものということじゃよ。現代の物理学では、陽子、中性子、電子が根源とみなされているはずじゃが。
アリス
なぁんだ、これ以上分けることができない最小の物質のことか。で、当時の自然哲学者は何て考えたの?
テレス
タレスは、万物の根源を「水」とみなしたんじゃ。水は気体にも液体にも、固体にも変化する。そして、すべての物に含まれ得る。水分の多少が物の形を変える。また、生命は水なくして存在できない。このような理由から、タレスは水が万物の根源であると考えたのじゃろう。
アリス
タレスは間違っているよ。水はさらに水素原子2個と酸素原子1個に分けられるということを忘れているよ。
テレス
そのとおりじゃ。だが、そのような考え方は近代以降のものじゃよ。確かに古代ギリシアの考え方は現代の物理学と比較して滑稽に思えるかもしれん。しかし、紀元前6世紀頃に物質の根源についての議論があったということは驚くべきことじゃと思わんかのぅ。
アリス
そういわれると、そうだなぁ。でも、もし古代ギリシアに僕がいたとしても、タレスみたいに深く考えないよ。パルテノン神殿がある丘の上で昼寝でもしながら毎日を過ごすと思うよ。
テレス
とほほ……
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