光然の高野山修行日記 ・十二 後半

ここまでは自室の話、ここからは学院全体の掃除についてお話いたします。

期末テストの初日、七月二十一日昼食後から院内の大掃除は始まりました。

まずは院内全ての仏器磨きから。それまでも日曜に院内各所の仏器磨きが行われていましたが、全部という事は中々ありませんでした。僅かな雲りが付いてしても監督の寮監先生は見つけてしまいます。
気合を入れて磨きつつも、班員と談笑したり、汚れ防止に敷いた新聞紙からすっかり疎くなった世間の事を眺めていると、大掃除初日は終了しました。

二日目は精進供の配膳以外にほとんど出入りの無かった加行道場の「道場洗い」。コンクリート剥き出しの床が印象的な二階に分かれている広い道場を、二学期の加行に向けて掃除しました。脚立に上がり窓ガラス拭き。濡らした新聞紙をちぎって撒き菷で掃いてチリ集め。何度かけても雑巾を黒く染める床。雑巾洗い用のバケツの水を交換するために、離れた場所にある給水所へ往復すること数度。

大変ながらも道場洗いは足が汚れる事を理由に、裸足での活動が許される唯一の機会となります。ここを逃がす手は有りません、普段足袋の着用を義務づけられている場所を裸足でぺたぺたと歩き回る事が出来るのは、少し悪い事をしているようで痛快でした。

試験最終日である七月二十三日は、前日の雑巾がけを張り切り過ぎたおかげで筋肉痛の気が残る中、毎朝下座(掃除)している場所を普段より長い三十分かけて綺麗にし、その後院内全ての窓ガラスを室内室外ともに磨き上げる事となりました。

専修学院は寶壽院という寺院に、寺院が間借りしている形をとっています。
単体でも広いお寺に学院部分が寮舎を含め引っ付いているので、たかが窓拭きと侮っていては火傷をしかねない数のガラス窓が待っています。

ですが、そうは言っても次の日には終業式。下山したらどこに行くか、昼食はどうするか、終業式は何時に終わりどんな形で外に出る事になるのか。

など様々な事を想像し、期待を語りながら掃除をしていたので、十三時半から十七時半までかかりながらも気が付けばあっという間の出来事でした。

話をしながらでなければもっと早く終わっていたのではないのかなと、思わなくもないのですが、そこはちょっと大目に見て頂きたいところ。

二学期に入ると加行では何をするのか、どんな生活が待っているのか。等どこか少し持っている不安が、目の前にある「帰宅」を引き立てる程よいスパイスとなって、気持ちが否が応でも盛り上がって来るのですから。

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