供花・供華・佛花


花のお供え

み佛さまへお供えする花のことを供花(くげ・供華)と言います。供花は、美しい花で佛前を荘厳すると伴に、その芳香をお供えします。良い香りは、み佛さまの最も喜ばれるご供養の一つなのです。

花は、六波羅密(ろくはらみつ)の「忍辱(にんにく)」を示しています。侮辱を耐え忍んだ経験により培(つちか)われた、強靱(きょうじん)な精神を持つことを意味し、あらゆることに応えることの出来る広い心をあらわしています。

色鮮やかに、香り豊かに

ご佛前には、どんなお花をお供えすれば良いのでしょうか。

それは、み佛さまに喜んで頂ける花です。難しく考える必要はありません。ご自身が頂かれたときにどんな花だったら嬉しいかを思い浮かべてみて下さい。心を込めて選ばれた花に、み佛さまもきっとお喜びになることでしょう。

故人のお好きだったお花を選ばれるのも良いことです。生前に、丹精込めて育てられ、美しく咲いた花をお供えされれば、さらに良いご供養となるでしょう。

花はお店で求められたものに限らず、ご家庭のお庭に咲いている花も四季折々に色鮮やかで、美しいものがあります。野や河原で摘まれた花も、素朴で可憐(かれん)な愛らしさがあり素敵ですね。

お花選びに迷われたときには、お花屋さんで「ご佛前にお供えするお花」と言ってお願いされると、お店の方で色々と組み合わせて選んで下さいます。美しい彩りの花束や、盛り花、フラワーアレンジメントも多くお供えされています。

昔から、毒のある花や刺のある花、香りの悪い花などは避けた方が良いと言われてきました。しかし、最近ではバラの花もよくお供えされています。バラの花は、見た目にも色鮮やかで美しく、香りも豊かで好まれる人も多くおられ、普段にお供えされるようになりました。また、胡蝶蘭などの鉢植えをお供えされる方もおられます。

お供えの仕方

花をお供えする為の佛具として、花瓶(けびょう・華瓶)があります。花瓶は、左右に一対でお供えします。大きな花びんは、佛壇の手前に置いてお供えします。

佛壇の中段には、金蓮華(きんれんか)と呼ばれる常花(じょうか・造花)をお供えします。また、シキミなどの青木のものをお供えすることもあります。色のあるお花は下段にお供えします。

花は佛さまにお供えするものではありますが、佛さまの方には向けません。花の表側を礼拝(らいはい)する側、手前を向けてお供えします。それは、花によって荘厳(そうごん)された佛さまの世界を、私たちが味わうという意味があるからなのです。

ご佛前にお供えされた、色とりどりのお花を眺めていると、不思議と心が安らいできます。それはみ佛さまの慈悲の心に触れ、身も心も清められていくからなのです。

樒(しきみ・しきび)

シキミは「香の木(こうのき)」「はなの木」とも呼ばれ、ご佛前やお墓にお供えする青木として良く用いられています。

シキミは、高さ2~10mの常緑小高木で、その葉や枝を切ると清々しい良い香りがします。木の皮や葉は乾燥して粉末にし、お線香や焼香になります。木の材は、念珠や寄木などに使われています。

花は3月~4月にかけて咲きます。直径3cm程の淡い黄色の花は、葉のつけ根部分に付きます。秋になると実が熟してはじけ、中から種子が勢いよく飛び出します。

シキミという名前は、この実に毒があるために「悪(あ)しき実」と呼ばれ、それが縮まって「しきみ」となったと言われています。

高野槇(こうやまき)

槇は、本来は杉の古名で「優れた木」という意味があります。

観音院でお供えしている槇は、高野槇と呼ばれるもので、和歌山県の高野山のみに生育しており、世界中で一属一種しかないというとても珍しい樹木です。

普通の槇はマキ科の常緑高木ですが、高野槇はスギ科とされています。槇は水や湿気に強く、長期にわたって変色しにくい上に、腐りにくいという特性があります。マキハダと呼ばれる木の皮は、水漏れ防止用の詰め物になります。

常花(じょうか)

常花とは、蓮(はす)の葉や花を模(も)した造花のことで、金色のものは金蓮華といいます。

観音院の内持佛(ないじぶつ)の大壇(だいだん)には、白・青・黄・赤・黒の五色(ごしき)の蓮の花の五瓶花(ごびょうか)がお供えされています。中央および四隅に配置されていますが、その配色は作法により定められています。

蓮の花は、泥中より茎を伸ばし水面で聖なる花を咲かせます。それゆえに、迷いの多き現世(げんせ)にありながらも清くありたいと思い、美しき人生を歩みたいと願って蓮華をお供えするのです。

心を込めて

折角お供えされたお花も、忘れてしまって枯れていては、お供えした意味がありません。毎日、水をとり替えて、枯れた花や葉の無いように気を付けましょう。

造花のお花をお供えされている場合も、出来るだけ生花を一緒にお供えするようにしましょう。

ご佛前の花は、佛さまに喜んで頂けるように、いつも生き生きとした新鮮な花をお供えするように心を配りましょう。

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