お盆には地獄の釜の蓋も開く?

■お盆には地獄の釜の蓋(ふた)も開く、とは少々悪趣味な発想で、
何時頃からこのような馬鹿げたことを言い出したのでしょうか。

■ところで「お盆には極楽の門が開いてご先祖さまが帰って来られ
ると」とは誰も言いません。極楽門は一方通行入り口だけで、出口
を見聞したことはありません。
▼死後の霊魂が、ご遺体やご遺骨に残っているとか、墓のカロート
の中に眠っているとか、さらに仏壇は「あの世」への扉というふう
に考えている人も少なくありません。この世へ毎年、お盆に帰って
来られるご先祖さまがあるとすればその霊魂を鎮(しず)める必要、
つまり、鎮魂の儀礼をしなくてはなりません。

■成仏できないでおられるご先祖さまがもし有るとしたら、お粗末
な引導をしたことになりますし、ご供養が下手だったのでしょう。

▼お盆の原語となった盂蘭盆(うらぼん・梵語でullambana 倒懸と
訳され、逆さ吊りの苦しみの意味)だそうですが、どのような罪で
このような罰を受けるのでしょうか。現実的には人を殺したような
報いだと思います。無期懲役か死刑に相当するような悪いことをし
た人は無限に倒懸の苦痛を受けても仕方ないです。
盂蘭盆経によれば、目連が餓鬼となった亡き母の救済のためにみ仏
の教えに従って供養して救ったことが典拠として上げてあります。
▼餓鬼はやせ細り、のどが細くて飲食ができず、常に飢餓に苦しん
でいるそうです。怖いですね。

■逆さ吊りの苦痛なんて昔は本当にこのような野蛮な刑罰もあった
かもしれません。現代刑法の罰条にもないような苦痛を他人に与え
ると、無期懲役くらいになるかもしれません。盂蘭盆の起源に振り
回されるのは現実的ではありませんが、このような「おどろおどろ
した」説話に起源を持つお盆が、国民的行事として定着しているの
は不思議なことです。

▼施餓鬼(せがき)は飢餓に苦しんで災いをなす鬼衆や無縁の亡者
(もうじゃ)の霊に飲食(おんじき)を施す法会で、お盆やお彼岸
法会の際には観音院で必ず一緒に執行しています。
ところで、「鬼籍に入る」の鬼籍は過去帳に記載されることです。
鬼は一般的には死者の霊魂のことです。怖い鬼は角と牙が生えてい
て虎のパンツを履いた格好をしています。これは最近また変な流行
をしている陰陽道の影響です。

■節分では鬼は邪(よこしま)で厄(やく)不幸をもたらす代表的
な存在として扱われています。
■冥府(めいふ)はあの世で閻魔(えんま)さんがいるところ、死
後の世界としておきましよう。冥福を祈るのは、死後の幸福を祈る
ことです。黄泉(よみ)の国も同じですが、これは古代中国の黄河
の流域に栄えた文化に於ける地下にあると信じられた世界です。

頭の片隅に置く

■戒名料が高いとか安いとか話題になることがありますが、観音院
は戒名料を頂いていません。
元気な内に得度して戒を授かり、数珠と袈裟と経本と戒名を受ける
のが本来の檀信徒のあり方です。
▼得度費用は五万円です。それでは葬儀の際にどうして戒名が付け
られるかというと、亡き人を「没後作僧(ぼつごさそう)」という
作法で、全部僧侶見習いにするというかたちをとります。
▼葬儀を依頼される場合に、戒名が無いと、亡くなった人を僧侶に
してくださいと言うことになります。

■大本堂を使っての寺葬儀は、ふつうよほど寺に貢献した人でない
と行われません。枕経から忌明けの法要まで一切の費用を含み平均
二百万円から三百万円くらいです。
■葬儀社の支払いは別です。寺葬儀は慣れた業者でないと不可能で
指定業者があります。
▼功労者の寺葬儀は施主がいない場合は、寺が施主となって無料で
執行する慣わしとなっています。

*御堂葬は寺として最高の敬意を払って執行します。お布施一式
 は高いようですが、年中不断の法要に替えて執行するもので、
 内陣に亡き人を安置することは普通にはありません。

大きな墓や佛壇は

■周囲を睥睨(にらみおろす)ような大きな墓は、子孫の負担にな
る場合があります。その寺に金銭の必用があると墓の面積や高さに
応じて寄付を割り当てられる場合があります。広島では大借金をか
かえたある寺院が四尺角の墓地に月額十万円の寄付を求めた例があ
ります。檀家は四散したとか・・・・。
■仏壇は小売価格の十分一が大卸とか、買取制で空気を販売してい
るようなものですから高いのも当然ですね。ところで、仏壇は老人
ホームでは預かってくれません。

▼自分の生涯にわたり大切に持ち続けたいなら、法主さんが考えら
れた仏龕(ぶつがん)式の仏壇が良いですね。
三尊を中心に、諸仏諸菩薩が秀麗に謹刻され、高さ24センチ、開け
て左右16センチ、締めて14センチ、重さ約1キロです。
中にUSB対応のチップを入れると過去帳やご遺影が8メガ入り、
いつでもパソコンで見れます。それに、いざという時に寺に預ける
こともでき、永代供養料を含めて百万円です。

*「仏龕式仏壇」は自分の身近、仕事机の上にも応接の飾り棚の
 上にも置けるよう三尊を諸仏が取り囲むように彫刻されていて、
 成立は千年以上 もの歴史があり、蓮台に思い出の品物が納め
 ることができます。

八月はお盆です

■関東では七月にお盆をするようです。
最初はお釈迦さん弟子である目蓮尊者が餓鬼道に堕ちて苦しんでい
る母親を救いたいと、如何すれば救うことができるかと教えを聞い
たところ、安居(あんご)の最後の日の僧自恣(そうじし)の日に
沢山の僧侶にご供養すれば救われると言われたそうです。
■安居と言うのは梵語で雨季のことで、この期間は僧侶は出歩かず
に修行したり、師匠の教えを聞いたり、指示を仰いだのでしょう。

■仏説盂蘭盆経というお経に説かれている話が中国を経て日本に伝
わりお盆の行事になったのです。

▼お盆には一つには墓掃除をして香華を供えること。二つには縁側
に近いところに四本の青竹を四隅に立て、内側に真菰筵(まこもむ
しろ)を敷いて、精霊棚を作り、棚の上に、位牌や供物、灯明、盆
花、線香、水などを供えます。側に施餓鬼の棚も設けます。
▼飾りつけが済むと門の前で迎え火を焚いてご先祖さまの霊を呼び
ます。霊が早くこれるように胡瓜の馬も用意します。お帰りの時に
はゆっくりと帰ってもらうために茄子の馬を作って用意します。
▼お坊さんが精霊棚を拝んで回ったので、盆の読経をしたのが棚経
の始まりです。花火は送り火を大規模にしたものです。
▼盆踊りは先祖を迎えて共に喜ぶ供養の一つです。

■現在の標準的な家屋では、迎え火も送り火も無理、精霊棚も無理。
▼約千年も続いたお盆の行事は、お寺に集まって、合同でお盆法要
に会うのが現実的になりました。
▼お盆に故郷の実家に帰って、兄弟姉妹、その子たちが一緒に食事
でもできるのは幸せです。

■最近、多くのサービス業では盆休みも無くなりました。地獄の釜
の蓋も開くと言われたのは厳しい徒弟制度の中、お盆とお正月だけ
が休暇でしたが、過酷な修業のような未成年労働者もいなくなりま
した。故郷の無い人も多く、過疎地では盆踊りもできません。都会
でも町内会が無くなり、子供も少なくなり盆踊りは下火になりまし
た。氏神さまの秋祭も下火、猪子祭りも見られなくなりました。

■観音院のお盆の法要は八月六日から十九日まで、毎日、午前十時
と正午十二時、午後二時の三回執行します。
八月五日は第一日曜日で大般若転読法要を午前十時から執行します。
八月六日は定例外に午前八時から「原爆犠牲者の追悼法要」を執行
します。何かと多忙な月です。

▼お盆の法要に併せて「施餓鬼供養」も執行することになっていま
す。八月五日の午前八時から清掃奉仕にご参加賜りますようご案内
申し上げます。

お盆の心得

■一番大切なのは反省です。自分の心を見つめることです。
▼全てのものを大切にする。人の居る場所、なすべき仕事を大切に
する。時間を粗末にしないこと。
▼他人に対して「いたわりの心、慈しみの心、思いやり、相手の立
場で考える」ような性格を持つよう努力してください。

■誠実で勤勉で、健康に留意して良く考える人になってください。
経済は停滞し、苦しい時もあると覚悟しなければなりません。戦後
続いて来た右肩上がりの経済は、停滞して当然です。
停滞の次は一段の危機に陥るか、また停滞するか、次第に良くなる
か。何事も諸行無常で、そのままの状態で止まっているものはあり
ません。四苦八苦も長続きしません。

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