お供物・ご佛飯


飲食・浄水の教え

お供物とは佛さまにお供えする物という意味ですが、その中でもご佛飯(ぶっぱん)や野菜、果物、菓子などの食べ物のお供えのことを「飲食(おんじき)」といいます。

飲食は六波羅蜜(ろくはらみつ)の禅定(ぜんじょう)にあたります。

禅定とは、心静かに瞑想(めいそう)すること、精神を集中する修練(しゅうれん)をすることをいいます。そのことから、安定した心、豊かな心で静かに日々を歩むことの大切さをあらわしています。

佛さまにお供えするお水は清らかなる水、「浄水(じょうすい)」といい、サンスクリット(梵語・古代インドの言葉)の・argha・の音写から「閼伽(あか)」ともいいます。

浄水は六波羅蜜の布施(ふせ)をあらわしています。布施とは自分の欲を捨てて、他に与えること、人に施(ほどこ)すことをいいます。お金や品物といった物質的なことばかりではなく、親切な行いも布施にあたります。

毎日のお供え

佛さまにお供えするご飯を「ご佛飯」といい、毎朝、炊きたてのご飯を私たちが頂く前に一番に佛さまにお供えします。ご飯は、佛飯器に蓮(はす)のつぼみの形にこんもりと盛ってお供えします。

しかし、最近では朝食はパンというご家庭も多くなりましたので、必ずしも朝にご飯を炊くとは限らなくなってきました。そこで、朝に定めず、ご飯を炊かれたときには、炊きたてのご飯を必ずお供えするようにしましょう。

ご佛飯は、お下がりを頂かれたり、庭の小鳥達に与えて施餓鬼(せがき)にされると良いでしょう。

お茶やお水、お湯は、茶湯器(ちゃとうき)に入れてお供えします。お茶は入れたての美味しいものを、お供えしましょう。

餅や菓子、果物は、高杯(たかつき)と呼ばれる細長い足の付いた台に盛ってお供えします。お供えは高杯に直接乗せないで、半紙などを敷いてから盛ると汚れが付きにくく、清潔であると伴に、器を永く大切に使うことができます。

お菓子や果物は、買ってきたまま、袋のまま供えるのではなく、小分けにして盛りつけます。高杯に乗らないものは、供笥(くげ・三方など)に盛りますが、ご家庭ではご用意がないと思いますので、綺麗なお皿やお盆などに盛ってお供えしましょう。

初物や珍しいもの、頂き物があったときには、まず一番に佛さまにお供えしてから頂きます。

法事などで沢山のお供えがあったときには、無理に佛壇の中に入れ込まず、佛壇の前や横に、お盆やお膳を設けてお供えします。

佛壇の荘厳を乱さないようにすることも大切なことなのです。

お供物は、一度お供えしたらそのままというのではなく、粗末にならないように早めに下げて、お下がりを頂きましょう。

お墓参りに行かれたときも、お供物はお参りが済んだら下げて持ち帰り、お下がりを頂かれるのが良いでしょう。

霊供膳(れいぐぜん)

観音院では、毎日、霊供膳がご本尊さまと金剛界・胎蔵界曼荼羅の前にお供えされています。皆さま方にお供え頂いたお野菜も、調理され、季節の味を彩っています。

ご家庭でも、ご命日や法事、お盆や春秋のお彼岸には、出来れば霊供膳をお供えしたいものです。

佛さまにお供えする霊供膳は、一汁三菜の精進料理(しょうじんりょうり)で、肉や魚などの「不殺生戒(ふせっしょうかい)」に触れるものは使いません。また、ニンニクやネギ、ニラなどの香りの強い物も避けます。

料理は、佛さまに喜んで頂けることを第一に考えます。旬の野菜を調理したり、大根や人参などの野菜を花の形に飾り切りしたり、お膳全体の色彩を考えて調和良く盛りつけ、見た目にも美しいお膳にします。もちろん、味付けにも気を配ります。だしは煮干しやカツオ節は精進にあてはまらないので、椎茸や昆布のだしを使います。料理は何度も味見をして、最高の味付けにして盛りつけます。

霊供膳の器の配置は、手前左に「飯碗」、右に「汁碗」を置きます。向こう側の左には煮物を入れた「平碗」、右に煮豆やあえ物の「壺」、中央には酢の物や漬物の「猪口(いのくち)」を置きます。

ご飯は、器に高く盛り上げてお供えしますが、これは佛さまはお代わりをされませんので充分に召し上がって頂けるようにという気持ちのあらわれであり、また、塔(卒塔婆・そとば・塔婆)を意味しているといわれます。

佛さまには作法に従ってお供えされます。最後に、お膳を回して向きを変えて佛さまの方を向くようにしてお供えします。

毎日のお供え

私たちが生きていく上で、欠くことの出来ない命の源、水と食物を、毎日、私たちが食べているのと同じ物をお供えすることにより、佛さまとの絆を深めゆきます。

そして、日々の食事が出来ることに感謝すること、私たちが口にする前に佛さまにお供えして、お下がりを有り難く頂くという気持ちを持つことが大事です。

また、お供物は、佛さまをお迎えしてお饗しするためのものです。大切な佛さまをご供養するのですから、心を込めてお饗ししましょう。どうしたら佛さまに喜んで頂けるかを考え、心を尽くすことが一番大切なことです。

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