■錫杖(しゃくじょう)■
錫杖はその名前の通り、杖(つえ)の先に錫(すず)の環
(わ)がついたものです。柄(え)の長さは三十センチ位の
物のから、大人の背丈程もある長い物まであり、また、高齢
や病気の者のみ杖で体を支えることが許されています。
この長い杖の数カ所に印(しるし)があるものもあり、こ
れは、川を渡る際に深さを知るために使われたそうです。
錫杖はいつごろからあったのか。本来インドでは、毒蛇や
毒虫などを近づけないように使われていて、お釈迦(しゃか)
さまの時代にもすでにあり、巡行にも用いられていたといわ
れています。
これは、日本でも山に入る時に熊避けなどに、腰に鈴(す
ず)をつけるのと同じですね。
歩みながら音を立てることにより、毒蛇、毒虫、猛獣から
身を守る役目をします。後に、足元の虫たちを踏んで傷つけ
たり、殺したりしないように、殺生をしないとの心配りとも
なりました。
昔から、比丘(びく)十八物といわれる僧侶の携行品の一
つです。
鳴杖、声杖、智杖、徳杖などの呼び方もあります。
現在では見掛けることも少なくなりましたが、乞食(こつ
じき・托鉢・たくはつ)の時に、戸口で来訪を知せる役目も
あります。
■錫杖の形と意味■
錫杖の先端は、五輪塔(ごりんとう)を形作り、その下に
鈷(こ)と呼ばれる環があり、更に、この中にそれぞれ環が
入っています。
観音院では、お加持(かじ)に使うものは十二環(かん)
の錫杖を用いていますが、とても良い音色です。山門の日切
地蔵さまは六環の錫杖をお持ちです。
この六と十二は環の数で、六は六度萬行(ろくどまんぎょ
う)、十二には十二因縁(いんねん)の意味があります。
六度とは六波羅蜜(ろくはらみつ)の布施・持戒・忍辱
(にんにく)・精進・禅定。智慧のことで善き行いの元です。
これを成せば全ての善行を積むことになるので萬行というの
です。
十二因縁の説明はとても難しいのですが出来るだけ簡単に
いうと、人間が生きていく上での苦しみや悩みの十二の段階
をいいます。
そして、この世に生を受ける前の世界から、死ぬまでの間
の業(ごう)が前世(ぜんせ)から現世(げんせ)、現世か
ら来世(らいせ)に、善き行いを成せば果報(かほう)がも
たらされるということです。
皆さんも、正しき目で見て、善き言葉を語り、善き行いを
心掛け善根を積む努力を致しましょう。
■錫杖のお加持■
車やバイク、土地や家を購入された時や引越しをされた時、
または、何かしら良くないことが続くときなどには、お祓
(はら)いをして頂くと安心です。
お祓いの時は全ての場所を、錫杖で加持し、悪い因縁を祓
い良運と安全をご祈祷(きとう)します。
家のお祓いは、家祈祷(やぎとう)といいます。
車のお祓い、家祈祷や地鎮祭、どちらも前もって予約が必
要です。
また、年に何人かの方は、どうしても良くないものが祓い
きれず、特別に全身を読経とともに加持して頂かれる方もお
られます。
観音院に来られた時には、長く寺内にいることが苦痛と言
われるほど圧迫されて、弱っておられ、時には、お寺の敷地
に入れずに、山門の前から携帯電話で「迎えに来て欲しい」
言われる方もおられます。笑い話でなくて本当です。
観音院の周りは、結界(けっかい)が張ってあり、悪いも
のが入れないようにしてあるのです。
そういった方々が、お加持の後は笑顔で軽やかな足取りで
帰って行かれるのは、不思議でもあり、み仏さまのお蔭を頂
かれているのを実感し有難いことと思います。
■鳴釜の霊気を頂いて■
毎月の一日・十一日・十三日・十八日・二十一日・二十四
日・二十八日には、鳴釜(なりがま)のご法要があります。
この時に、鳴釜の霊気を頂いた錫杖で、お体を加持しても
らえます。特に気に掛かる所がある方は、お加持の時に僧侶
にお申し出になって下さい。その箇所を念入りにお加持下さ
います。
錫杖のシャンシャンという音は、心も体も洗われるような
澄んだ音色で、邪気(じゃき)を祓い清める働きがあります。
その音色は、時には涼しげで、時には力強くもある音楽のよ
うな感じもします。
頭がスッキリして冴(さ)えてくる、気持ちが落ち着く、
心が穏やかになる、体の痛みが楽になると皆さん言われます。
鋭利な刃物で痛みもなく、悪い部分をスパッと削ぎ落とし生
まれ変わったような感じというのは私の感想です。
皆さんも、是非一度、ご霊験を体感してみて下さい。