東京の両国にあります観音院の東京道場ではテレビ会議システムで観音院本堂のご法要が中継され、お参りできます。関東地区の僧侶は東京道場にても修行させていただいております。
法主さま、院主さま、信徒の皆さまの温かいお心をもちまして、東京道場を開設していただき、心より感謝申し上げます。
法主さまには毎月、弘法大師さまご縁日、二十一日前後にご親教いただき、直接ご指導を受け、真にありがたいことと存じます。
「まことの道」を歩む僧侶として、東京道場にお参りさせて頂く僧侶の皆さまと共に修行、研鑽に励むことをお誓い致します。
観音院の信徒の皆さまのご供養ご祈願、ご幸福を、日々に一心にご祈念申し上げます。
広島の観音院では一年三百六十五日休むことなく、日々に三座の法要が丁重に執行されております。
僧侶衆は山門から行道し、日切地蔵さまを礼拝(らいはい)、続いて萬倍(まんばい)さまにお参りしてご本堂に入堂し、三礼(さんらい)がお唱えされます。
この法要の始めに、御導師さまより祈願文の奉読がございます。信徒の皆さまのご信心と供養祈願のお心を導師が代表として御本尊さまにお伝えなされます。
「謹み敬って真言の教主大日如来、両部界会の諸尊 聖衆 仏法伝来の三国伝燈の諸大阿闍梨 高祖大師、殊には子安観世音菩薩 利剣不動明王 ・・・・・・ 」から始まる「達親文(たっしんもん)」が拝読されます。
両部界会(りょうぶかいえ)とは、「金剛界曼荼羅」と「胎蔵界曼荼羅」の両部界をいいます。この両部界会が示す仏世界に存する諸尊聖衆の中に十三仏 乃至(ないし)十九仏がおられ、中心に真言教主大日如来さまがおられます。
今号では「金剛界大日如来さま」について書かせていただきたいと思います。
真言宗の開祖空海弘法大師さまは真言宗の根本経典として「金剛頂経」と「大日経」の二経を重視されました。
この二経を金剛界・胎蔵界の両部(りょうぶ)を説く教典として、両部大経と申します。
金剛頂経・金剛界は大日如来の智慧(ちえ)、大日経・胎蔵界は大日如来の慈悲(じひ)を展開しておりますが、この二界は二つであって、二つでないの関係であり、真言密教の世界を説いております。このことを両部不二(ふに)と申します。
金剛界の主尊 大日如来さまは、私どもの無知や迷いを退け、堅固なみ仏の智慧(ちえ)を象徴する「智拳印(ちけんいん)」を結んでおられます。左手が人間界で、右手が仏界であって、如来の仏智と悟りに至った人間の智慧が結合する、一体と成る意味であると言われております。
また御頭には「五智」の宝冠の戴いておられます。
この五智とは、
法界体性智(ほっかいたしょうち)=真理の世界の本性を明確にする智慧。
大円鏡智(だいえんきょうち) =鏡の如く法界の万象を現す智慧。
平等性智(びょうどうしょうち) =諸法の平等を観じる智慧。
妙観察智(みょうかんさつち) =諸法を正当に追求する智慧。
成所作智(じょうしょさち) =自他のなさねばならない事を行う智慧。
—— であります。
「金剛頂経」ではこの五智は、
法界体性智は 大日如来の智慧、
大円鏡智は 阿■如来の智慧、
平等性智は 宝生如来の智慧、
妙観察智は 阿弥陀如来の智慧、
成所作智は 不空成就如来の智慧
とされ、大日如来の持つ智慧が四つに開いて、あわせて五智という考え方であります。
このように書いてきますと大変難しいと思われるかと思いますが、私は大変親しみやすい仏さまだと思います。
皆さまもよくごぞんじの奈良の大仏さまは大毘盧遮那如来(だいびるしゃなにょらい・大日如来)さまで、国家安泰と万民豊楽(ぶらく)の願いで建立されました。
観音院では本尊大日如来さまのほかに法主さま執務室に薬師瑠璃光如来(香薬師)さまと阿弥陀如来さまもおまつりされています。
二月十五日は「涅槃会(ねはんえ)」ですが、釈迦如来さま涅槃図がおまつりされます。観音院では本堂向かって右に、精緻な螺鈿(らでん)の優美な「釈迦涅槃」がおまつりされています。
大日如来さまは、如来、菩薩、明王、天部の「根本仏」とされ、その太陽の光のような如来の智慧の光で、すべての生きとし生けるものに慈悲をそそぎ、救済されます。そのために、すべてのものに適応するように、いろいろな形で仏身を現されます。
軟弱で救うことが大変難しい者達には忿怒(ふんぬ)の相を現し、忿(いか)りの愛の力をもって、浄めて正法に帰依(きえ)させるのであります。
最高仏である大日如来さまは、あらゆる形を自由にとられますが、私たちに接してくださるお姿は、最も親しみ深い「菩薩さま」のお姿となっていられるのであります。
「如来」と名のつく仏さまは、修行を完成し悟りを開かれ、ふつう出家の姿で身に清楚な衣をのみまとい、装飾品を着けておりませんが、大日如来さまは、菩薩さま(悟りを求めて修行されている)と同じように宝冠をいただき、腕飾りや胸飾りをし、天衣を着ておられます。
観音院ではご本堂須弥壇(しゅみだん)中央に金剛界胎蔵界大日如来さまをおまつりしております。
皆さまも観音院にお参りの際は、有り難ききご縁にておまつりされております大日如来さまに親しく礼拝(らいはい)され、御加護を頂かれて下さいませ。