【寅さん】 院家さんは良いな。若い嫁さんが来て、毎日ほんわかで本当の花和尚さんかもしれないな。
院 この前、住職さんがヒヤシンスを四鉢くれて綺麗に咲いているが、私は花が咲くような雰囲気は周りに全然無いよ。なんと観音院は忙しいお寺だな。四月には地方選挙があるので、当選させたい議員が三人おって、期日前投票に行ってくれるよう頼んで周っている。お願いしていた候補者さんを当選させるよう、皆さんよろしくお願いします。
【寅さん】 白骨の御文章と聞いたけど、どんなものなの。
【院家さん】 白骨の御文章の願文は次のようなものだ。味わい深いから考えながら読みなさい。
「夫 人間ノ浮生ナル相ヲツラツラ觀スルニ オホヨソハカナキモノハノ世ノ始中終 マホロシノコトクナル一期ナリ サレハ イマタ万歳ノ人身ヲウケタリトイフ事ヲキカス 一生スキヤスシ イマニイタリテ タレカ百年ノ形躰ヲタモツヘキヤ 我ヤサキ 人ヤサキ ケフトモシラス アストモシラス ヲクレサキ人ハ モトノシツク スヱノ露ヨリモシケシトイヘリ
サレハ 朝ニハ紅顔アリテ夕ニハ白骨トナレル身ナリ ステニ无常ノ風キタリヌレハ スナハチフタツノマナコ タチマチニトチ ヒトツノイキ ナカクタエヌレハ 紅顔ムナシク變シテ 桃李ノヨソホヒヲウシナヒヌルトキハ 六親眷屬アツマリテナケキカナシメトモ 更ニソノ甲斐アルヘカラス
サテシモアルヘキ事ナラネハトテ 野外ニヲクリテ夜半ノケフリトナシハテヌレハ タヽ白骨ノミソノコレリ アハレトイフモ中々ヲロカナリ サレハ 人間ノハカナキ事ハ 老少不定ノサカヒナレハ タレノ人モハヤク後生ノ一大事ヲ心ニカケテ 阿彌陀佛ヲフカクタノミマイラセテ 念佛マウスヘキモノナリ アナカシコ アナカシコ」
この文章は山科本願寺の聖地を寄付した海老名五郎左衛門の十七歳になる娘が急病で亡くなり、五郎左衛門蓮如上人に無常について教えを乞いました。それに対して白骨の御文章を著されたのです。
応仁の乱によって始まった戦国時代はまさに火宅無常末法の世でした。その時に日本人の精神を高めた偉大な宗教家が誕生しました。蓮如上人です。
月刊観自在 平成27年4月号から抜粋