年の瀬に感じる仏教

師走、師も走るくらい忙しいとされる年の暮れのこの時期、巷でも賑やかな催しが開催されます。代表的なものがクリスマス、日本では戦国時代にキリシタン大名同士の戦の際、一時的に休戦協定を結び、クリスマス・イヴを祝ったのが始まりとされています。実際に庶民の生活に行事となったのは明治時代以降のようです。
 現在の日本では、クリスマスは家族や子供たち、恋人達のための楽しい行事となっているようです。
■成道会(じょうどうえ)
 仏教では、十二月には「成道会(じょうどうえ)」という大事な法要があります。観音院でも毎年、十二月八日になると、この法会が厳かに営まれます。
 お釈迦さまは、二十九歳で出家され、六年に渡る苦行の後、三十五歳の時に菩提樹の下で瞑想(めいそう)を行い、悟りを開かれました。その日が、丁度十二月八日だったとされています。
 二月の涅槃会(ねはんえ・常楽会)、四月の降誕会(こうたんえ)と並んで仏教の代表的な行事です。
■身近な釈迦如来さま
 観音院では毎月第一日曜午前十時から「大般若会」を行っていますが、「釈迦如来さまと十六善神図」にお参りし、大般若経二組、壱千二百巻を転読し、皆さまと共に、釈迦如来真言を唱え、恩徳を讃嘆(さんたん)します。のうまく さまんだ ぼだなん ばく(常用教典まことの道 二十二頁)
 観音院には、ご本堂の右前におまつりする「釈迦涅槃図」は美麗精緻な螺鈿(らでん)の作りで、お釈迦さまとお弟子達が御入滅の悲しみを超えて崇高(すうこう)にえがかれています。毎日の法要で皆さまと共にお参りしています。
 本堂の中央には、お釈迦さまのお御足の裏の瑞祥紋をあらわした「仏跡石」をおまつりしています。皆さまも、ゆっくりと手のひらで撫でながら、ご自身やご家族への御守護をご祈願されてください。
■除夜の鐘
 十二月三十一日、年越しの除夜の鐘。鐘を撞(つ)く回数は、百八回です。百八という数は、人間の煩悩の数を表しています。
 百八煩悩の具体的な内容は諸説ありますが、一般的には、修行の階梯のである三道の見道(けんどう)、および修道(しゅどう)にて断つべき九十八の煩悩に、貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)・慢(まん)・疑(ぎ)・悪見(あくけん)の六根本煩悩に付随してはたらく煩悩とされる随煩悩(ずいぼんのう)の中の十の纏(てん)を加えたものともいわれます。
 貪は貪欲、瞋は怒り、痴は愚かな心で、「三毒」と言われます。
 数珠の玉の数は、お釈迦さまのお諭しの百八果が正式です。
 観音院で得度を受けられた方々には修行用の正式な数珠が授与されますが、日々み仏を念じ、自らの怒りを抑え、質素を旨として、生きて行く努力する誓いと御守護を願います。
■三衣一鉢(さんねいっぱつ)
 仏教では、僧侶が個人的に所有することを許されたものは、大小の三種類の袈裟と、托鉢の際に布施供物を受けるための一個の鉢のみだとされていました。
 東南アジアなどの、上座仏教の文化が未だに色濃く残る地域では、袈裟のみを身につけた修行僧の姿をよく見かけることができます。
 仏教発祥の地のインドは、南部では一年を通して高温で、北部でも四~五月の酷暑期には、平野部で五十度を越す所もあるようです。
 インドに比べ、中国や日本の気候は、冬には雪も降り、一年中袈裟だけを着て過ごすには寒すぎる地域でした。そのため、僧侶の着る袈裟も、気候に合わせて変化していきました。衣の上から袈裟を身につけるスタイルは、中国から始まりました。
 中国の僧侶は、黒衣(こくえ)と呼ばれる衣装を着けて修行をしていました。黒衣の色は、純黒ではなく、墨で染めたくすんだ黒色のものが用いられていたようです。
 観音院の僧侶は、一年を通して、作業中は作務衣、法要では、肌襦袢(はだじゅばん)の上に白衣(はくえ)、その上に空衣(うつお)と呼ばれる黒い衣をつけ、その上から如法衣(にょほうえ)と呼ばれる黄色い袈裟を身に着けます。生地の材質のためか、夏場は暑く、冬は寒く感じられますが、本堂の中は、空調により、一年を通して室温が一定になるように保たれているので快適に過ごすことができ、寒暖に意識を奪われること無く、皆さまのご供養、ご祈願をみ仏さまに一心にお祈りすることができます。お参りの際は、外気温差で体調を崩されませんようお気をつけくださいませ。
■「僧侶養成講座」が開講されていますが、得度・修行を志される方は住職にご相談ください。
■年越し法要
 観音院では、毎年、大晦日の夜十一時より、皆さまと共に般若心経を繰り返しお唱えし、心を静め、僧侶の叩く鐘に合わせて、年越し法要が盛大に営まれます。
 二〇〇五年、新年の本尊守護、家内安全、無事祈願、所願成就の願いをこめて、ご家族でお参りにいらしてください。
■年末大掃除 ご奉仕下さい
 また、十二月には、大般若会の五日(日)の午前八時から、十九日(日)の午後三時から、年末のお寺の大掃除があります。
 お掃除は厄難を払い、集中力を高め、心を清める功徳があります。お釈迦さまのお弟子には、み教えのまま掃除をし続けただけで悟りを開いた方もおられるそうです。ご都合がよろしければ、是非ともご奉仕くださいませ。
 法主さま、住職さま、職員一同、心よりお待ちしております。

タイトルとURLをコピーしました