光然の高野山修行日記 ・十五 後半

余談ではありますが、時間を奪われるのでお説教は無いにこしたことは有りませんが、実を言うとその場で即座に雷を落として貰えるのが一番助かるのです。それと言うのも、遅刻者が多い場合や何か不始末が重なっている場合は「あとで楽しみにしていろ」とでも言うような溜息だけで加行道場への移動が始まり、その後へ不安を抱えたまま行法に入る事態は出来るだけ避けたいのが人情というもの。

本筋に戻ります。全員が合掌出来たら点呼が行われ、そのままながれるように寮監先生が「入堂します」と宣言し、戒柝と呼ばれる拍子木を打ち鳴らし、一同正座のまま投地礼から合掌をしながら起立をします。

そのまま加行道場の奥に座坪がある者から順番に二列で、加行道場への行進が始まります。

時間は四時十分少し過ぎ。四度加行が始まった九月でも日が昇る時間にはまだ少し早いので、電気が灯された階段から見える外は暗く何があるかもわかりません。

加行道場が近づいてくると行進は二列から一列にまとまり始め、道場の前に着くとひとりひとり一礼してから中に入り、自分専用の壇に向かいます。

他所の視線からそれぞれの壇を遮るために障子製の明り屏風が置かれているので、歩いた風で膨らんだ袖を引っ掛けてしまわないよう用心する必要がありました。うっかり障子を破くと修理の手間が必要なので、しずしずと歩く方が賢明と言えます。

到着してもすぐに席に着ける訳ではありません。詳細をお話するのは次回以降に譲りますが、樒の枝を柄付の香炉「柄香炉」に見立てた「華香炉」を手にした一同の投地系礼から始まります。

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