光然の高野山修行日記 ・十五 前半

前回横道に逸れて伝えきれない事も多くありました。引き続き、四度加行一日の流れについてお話いたします。

加行に入る前の準備を終え、持仏堂の左右に分けられたそれぞれの座坪で如法衣(お袈裟)を身に付けて、護身法と呼ばれる印を結んだ所までが先月の話になります。

鐘が鳴った時点で合掌していない者は遅刻扱いとなるので、印を結び終えたら入堂開始の鐘が鳴るまで正座をして合掌待機。

加行監督を務める寮監先生も持仏堂入り口で護身法を結び、自身も合掌をしながら待機している生徒、座坪に滑り込み作法を行う生徒達の挙動に目を光らせていらっしゃいました。

用意や移動で慌ただしいながらも、全員心静かに鐘が鳴るのを待つ・・・・となるのが理想的ではあるのですが、順調に行くばかりではありません。

護身法は手で印を形作るだけではなく、印を結んだうえで、ご真言、観想(その印やご真言の意味やイメージを表現した言葉とお考えください)を行う必要があります。

如法衣を身に付け、護身法を結び終えるのは慣れが必要でした。

特に護身法を暗記出来ていない間は、護身法伝授折紙の写しを確認しながらになるので、余計に時間が掛かります。

遅れて印を結ぶ者の隣近所で待機する者は平穏に加行を望み、早く合掌してくれる事を願う中で「プツッ」と鐘の音を院内中に届けるマイクの音が耳に入るのです。

豪胆な者は護身法の印だけを素早く結び、何食わぬ顔で鐘に間に合ったように合掌をし、律儀な者は周囲を待たせているプレッシャーを受けながら作法をきちんと終わらせて行きます。

出席簿を手にした寮監先生が全員の合掌を確認しながら、間に合わなかった者は遅刻として扱い、作法を省略した者にはきつい一言や、加行終了後に事務所へ出頭するよう要請する一幕も時にはあります。

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