光然の高野山修行日記 ・五

今回は学院内での水行について、お話をさせて頂きます。

専修学院に用意されていた水行場は全体が檜らしき木材で設えられており、また比較的最近に改修されただけあって、木の良い香りが漂っています。

寮からの移動が許される自由時間ならば、いつでも利用する事が可能で、私は早朝にこのような流れで利用していました。

三時:起床。

水行をすると冷えた体を温める為エネルギーを使うのか、お腹が空くのでお握りやドライフルーツを食べ、苦く入れたお茶等で目を覚まし、水行セットを持ち部屋を出る。
同居人を起こさぬ極力静かな行動が大切。

三時十五分:
土室(つちむろ)と言う部屋で毘沙門天像と向き合い百礼(五体投地)。

三時三十五分:
水行場の水槽に水を溜める。褌一丁になりいざ水行。

三時四十五分:
体を拭き、衣帯(えたい)を整えたら寮舎の洗面所で歯磨き。濡れた水行セットを部屋に置き、経本と袈裟を持ち読経や声明の練習開始。

四時十分:
当日の日直班が動き始めた気配を感じたら、暇に任せて各所の鍵開けなどの手伝いをして練習に戻る。

五時:
起床の鐘が鳴り集会所へ。

朝早めに起きて水行をする。というだけのものなのですが、学院からは行えとも、行った方が良いと言われる事は無く、あくまで修行生活の味付け程度の扱いとなっています。

七月、九月であっても、高地であるおかげか水を出していると蛇口が結露する程に良く冷えていて、体に負担が掛かりかねないので、あくまで自己責任で行う事になります。

それでは実際の水行の手順を紹介致します。

まだ日が昇る前の時間は空気がひんやりとしているので、衣帯を脱いで体を冷やす前に脱衣所にマットを敷き、水行場の水槽に水を溜めておきます。

その後褌一丁となり、般若心経一巻、水天様のご真言「オンバロダヤソワカ」を七返お唱えします。

この頃になると水槽に水がたっぷりと溜まっているので、桶に水を汲み、再び水天様のご真言を唱えながら心ゆくまで頭から水をかぶるのですが、冷水だけあって心臓が「キュッ」となるので、万一の事態を招かぬよう気合と共に声を張り上げてお唱えする事が大切です。

終わったならば素早く体を拭き、衣帯を纏い、脱衣所の水分を手早く拭き取ってマットを棚に干します。

以上が院内での水行の流れとなります。水行が終り、しばらくすると冷えた体を温めようと血流が活発になるのか、ポカポカと眠気がやって来ます。

奥の院での水行の話はまたの機会に。

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